大手町ビジネススクール(OBS)開設にあたって

「変化の時代をどう乗り越えるのか」。大手町ビジネスイノベーションインスティテュート(OBII)では2006年の設立以来、ワークショップや合宿を通じてビジネスパーソンの交流を進めてきましたが、このたび新たに大手町ビジネススクール(OBS)を開設することになりました。

ポータルサイトgooニュース「ボクナリ(β)」で連載中のネット小説「栗栖准教授のMBA進化論」と連動。小説のケースを参考にしながら、リアルのスクールでは参加者同士が、多様な考えをぶつけ合い、刺激しあうことで、「自ら道を切り開く」、新しいカタチのビジネススクールを目指します。


  • これからはマネージメント能力がより価値を生み出す

日本における若手労働者の境遇はあまり改善されない可能性があります。その理由は、いわゆる「指示を受けて行う仕事」に対するグローバル競争が激しくなり、シンプルな仕事はコストダウンしていく可能性があるためです。日本のように資源のない先進国は、このようなグローバル競争に大きく影響を受けると考えています。

今後は、クリエイティビティがあり、チーム力を総合的に高めるマネージメント能力が重要な位置を占めると考えています。それを見据え、マネージメント能力を若いうちから身につけておくことで、今後の日本産業界の荒波を乗り越えていけるのではないかと考えています。マネージメント能力というのはチーム力向上の技術です。複数のメンバーで共同して仕事をするのなら常に必要となる技術ですので、たとえ学生でも必要な能力ですし、若くからそのことを理解していれば、10年後には大きな差になっているでしょう。

  • MBAではマネージメント能力向上を教えない?

最近は日本でもMBA(Master of Business Administration)が注目されています。MBAホルダーがよく言う「MBAで得たもの」の上位3つは、「広い視野」「考え抜く力」「人脈」です。しかし、最後の人脈を別にすると、最初の2つはそれ自体をMBAが「教えている」わけではなく、あくまで宿題やクラスで間接的に教えられています。

ヘンリー・ミンツバーグが言うように、マネージメント能力は単なる分析技術だけではありません。仕事をするのも、商品を買ってくれるのも人間です。人間や組織特有の性質を十分に理解することがビジネスにおいても日常生活においても重要になります。

  • 本プログラムの狙いとユニークなポイント

そこで、OBSのプログラムは、マネージメント能力をつけるきっかけを作り出すことに重点を置いた構造になっています。

意図的な不安定状態を作り出す-- まず、クラスの目的を明示的に定めていません。通常のMBAケーススタディでは、事前課題として3つほど質問を与えられています。ここではそれを自ら創る、という設定にすることで「与えられたものをこなす」というスタンスから、「自ら道を切り開く」というスタンスへの転換を期待しています。

グループディスカッションで、最も重要と思われる質問を決める、という課題は、チームとしての方向付けをどうマネージメントするか、ということを体感してもらうためです。これはMBAでも行われている手法です。質問が多様なため、混沌とした状態のなかでまとめないといけません。誰がまとめるのか、どうまとめるのか、意見は一致するのか、時間の限られたなかでのチームマネージメントを体感してもらいます。

このような混沌のなかでのマネージメントは、現実のビジネスの状況に近いものです。そもそも「なにをすればいいのかわからない」という状態のなかでマネージャーは大きな目標に向かって、チームとして力を出していかないといけません。

イノベーティブな知見は多様性から生まれる --

もうひとつの大きなポイントは、イノベーティブな、真に新しいものを生み出すための仕組みを入れていることです。

グループディスカッションの前に質問をそれぞれ独りで考えてもらいます。他人の意見に左右されないアイデアをあらかじめ書いておくことにより、誰かの話を聞いた後に「これって同じだ」と思い込まないようにするためです。似ているようでも実は違う観点が入っていることが多数ありますので、それを拾い上げてください。

また、できるだけ「くだらない」質問をアリにしています。これは、発想法の一種です。一般に、かしこまった状態では固定観念にとらわれているため、通り一遍のアイデアしか出ないことが多いです。ところが、くだけた席だとどんどんアイデアが広がっていくことがあります。ここでは「くだらない質問」を意図的にOKにすること、とにかくたくさんの質問を書くことによって、なかば強制的に思考のリミッターを外せるようにしています。

OBSでは、知り合い・同じ所属の人とは分かれてグループになってもらいますが、メンバーを
多様にすることによって、考え方、価値観の違いを実感することが出来ます。「そんな意見、ありえない」と思ったら、それは新たな知見を得られた、と考えてみてください。ありえないことを考える人々もいる、ということを知りえるだけでも「広い視野」を得られるきっかけになります。

2008年6月1日・OBII運営チーム一同